IPCC 第4 次評価報告書統合報告書政策決定者向け要約(SPM)のポイント
統合報告書は、①気候変化とその影響に関する観測結果、②変化の原因、③予測される気候変化とその影響、④適応と緩和のオプション、⑤長期的な展望 の五つの主題のもと、第1~第3 作業部会報告書を分野横断的・有機的にとりまとめたものである。同報告書では、最新の科学的知見に基づく情報を的確に提供するとの観点から、各作業部会報告書の政策決定者向け要約及び本文をもとに、第4 次評価報告書全体の流れが分かりやすくとりまとめられている。
各主題ごとの主要な結論は以下のとおり。
主題1 気候変化とその影響に関する観測結果
- 気候システムの温暖化には疑う余地がなく、大気や海洋の全球平均温度の上昇、雪氷の広範囲にわたる融解、世界平均海面水位の上昇が観測されていることから今や明白である。
- 地域的な気候変化により、多くの自然生態系が影響を受けている。
主題2 変化の原因
- 人間活動により、現在の温室効果ガス濃度は産業革命以前の水準を大きく超えている。
- 20 世紀半ば以降に観測された全球平均気温の上昇のほとんどは、人為起源の温室効果ガスの増加によってもたらされた可能性がかなり高い。
主題3 予測される気候変化とその影響
- 現在の政策を継続した場合、世界の温室効果ガス排出量は今後二、三十年増加し続け、その結果、21 世紀には20 世紀に観測されたものより大規模な温暖化がもたらされると予測される。
- 分野毎の影響やその発現時期、地域的に予想される影響、極端現象の変化に伴う分野毎の影響など、世界の気候システムに多くの変化が引き起こされることが具体的に予測される。
主題4 適応と緩和のオプション
- 気候変化に対する脆弱性を低減させるには、現在より強力な適応策が必要とし、分野毎の具体的な適応策を例示。
- 適切な緩和策の実施により、今後数十年にわたり、世界の温室効果ガス排出量の伸びを相殺、削減できる。
- 緩和策を推進するための国際的枠組み確立における気候変動枠組条約及び京都議定書の役割将来的に向けた緩和努力の基礎を築いたと評価された。
主題5 長期的な展望
- 気候変化を考える上で、第3次評価報告書で示された以下の五つの「懸念の理由」がますます強まっている。
- 極地や山岳社会・生態系といった、特異で危機にさらされているシステムへのリスクの増加
- 干ばつ、熱波、洪水など極端な気象現象のリスクの増加
- 地域的・社会的な弱者に大きな影響と脆弱性が表れるという問題
- 地球温暖化の便益は温度がより低い段階で頭打ちになり、地球温暖化の進行に伴い被害が増大し、地球温暖化のコストは時間とともに増加。
- 海面水位上昇、氷床の減少加速など、大規模な変動のリスクの増加・適応策と緩和策は、どちらか一方では不十分で、互いに補完しあうことで、気候変化のリスクをかなり低減することが可能。
- 既存技術及び今後数十年で実用化される技術により温室効果ガス濃度の安定化は可能である。今後20~30 年間の緩和努力と投資が鍵となる。
(以上)
ソース:気候変動に関する政府間パネル(IPCC)第4次評価報告書統合報告書の公表について(気象庁)
http://www.jma.go.jp/jma/press/0711/17a/ipcc_ar4_syr.pdf
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